PMSによる吐き気とは?原因や対処法、吐き気を伴う他疾患との違いを解説
生理が近づく時期に、吐き気や胃の不快感を感じた経験はありませんか?月経のある女性の多くは、PMS(月経前症候群)に伴う何らかの不調を経験しており、吐き気もよく見られる症状の一つです。
本記事では、PMSによって吐き気が起こる理由について、ホルモンバランスの変化、水分の体内への溜まりやすさ、精神的ストレスの観点から解説します。吐き気を軽減するための対処法や、他の疾患との違いを見極めるポイントもご紹介します。
PMSによる吐き気を正しく理解し、日常生活を少しでも快適に過ごすための参考にしてください。
橋本駅南口から徒歩1分の長谷川レディースクリニックでは、生理不順やPMS(月経前症候群)など、女性特有の症状に関する検査・治療にも対応しています。経験豊富な専門医が、一人ひとりのお悩みに寄り添いながら、適切な医療サポートを提供いたします。
また当院では、神奈川県相模原市・淵野辺駅から徒歩2分のソフィアレディスクリニックと連携し、婦人科および不妊治療においてスムーズな連携体制を構築しています。検査結果や治療方針の共有により、患者さまにとって安心かつ効率的な診療環境をご提供いたします。
PMSによって吐き気が起こる原因
PMSによって吐き気が生じる背景には、主に次の3つの要因が関係しています。
- ホルモンバランスの変化
- 水分貯留と胃腸への圧迫
- ストレスによる自律神経の乱れ
ホルモンバランスの変化
女性の生理周期は、エストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンの分泌量が周期的に変化することで成り立っています。生理前の約3〜10日間は「黄体期」と呼ばれ、この時期はエストロゲンとプロゲステロンの分泌が大きく変動し、PMSの症状が現れやすくなります。
生理前にプロゲステロンの分泌が急激に増えると、胃腸の働きが低下し、消化や腸の動きが鈍くなることで、吐き気や胃の不快感が生じやすくなると考えられています。
エストロゲンとプロゲステロンは、バランスを保ちながら体の調子を整えています。それぞれの主な役割は以下のとおりです。
- エストロゲン:子宮内膜を厚くして妊娠の準備を整える
- プロゲステロン:妊娠を維持するために子宮内膜を安定させる
これらのホルモンバランスが乱れると、心身にさまざまな不調が現れます。エストロゲンが減少すると、気分の落ち込みやイライラ、頭痛などを感じやすくなります。プロゲステロンが増加すると、胃腸機能の低下や吐き気、便秘などの不調が起こりやすくなります。
水分貯留と胃腸への圧迫
PMSの時期には、体内に水分が溜まりやすくなり、むくみを感じる人も少なくありません。むくみはプロゲステロンの分泌が増えることで起こりやすく、水分を含んで膨らんだ腸が胃腸を圧迫し、吐き気や不快感につながると考えられています。水分貯留は、むくみだけでなく、一時的な体重増加や便秘を招く原因にもなります。
胃腸が圧迫されることで、吐き気に加えて食欲の低下やお腹の張りを感じることもあります。吐き気や食欲不振などの症状は、生理が始まるとともに徐々に和らいでいくのが一般的です。
ストレスによる自律神経の乱れ
PMSの時期は、ホルモンバランスの変化に加えて、日常のストレスや不安が重なりやすく、自律神経が乱れやすい状態になります。自律神経のバランスが崩れると胃腸の働きにも影響が及び、吐き気や胃の不快感が現れやすくなります。自律神経は、交感神経と副交感神経が互いに作用しながら、体のさまざまな機能を調整しています。
強いストレスを感じると交感神経が優位になり、胃腸の動きが抑えられることで、吐き気を引き起こしやすくなると考えられています。ストレスを溜め込まないように、以下の工夫をしましょう。
- 意識的にリラックスする時間を設ける
- 趣味に没頭する
- 無理のない範囲で体を動かす
自分に合ったストレス解消法を見つけていきましょう。
PMSによる吐き気の対処法
PMSに伴う吐き気を和らげるためには、日常生活の中でできる工夫が役立ちます。主な対処法として、次の5つが挙げられます。
- 食生活を見直す
- 適度な運動をする
- リラックスできる環境を整える
- 市販薬や漢方、サプリメントを取り入れる
- 症状が続くときは医療機関へ相談する
食生活を見直す
PMSによる吐き気を軽減するためには、胃腸にやさしい食事を意識することが大切です。消化の良い食品は胃腸への負担が少なく、消化吸収もスムーズに進むため、吐き気の緩和が期待できます。おかゆやうどん、白米、豆腐、鶏むね肉、白身魚などは取り入れやすい食材です。
胃腸を刺激して吐き気を強める可能性がある食品や飲み物は控えましょう。脂っこい料理や辛いもの、冷たい食べ物のほか、カフェインやアルコール、炭酸飲料なども注意が必要です。
水分が不足すると体内の水分バランスが崩れ、吐き気が悪化することがあります。一度に大量に飲むのではなく、少量ずつこまめに水分を補給することを心がけましょう。常温の水や麦茶、ノンカフェインのハーブティーなどがおすすめです。
適度な運動をする
適度な運動は血流を促し、自律神経のバランスを整える働きが期待できます。ウォーキングやヨガなどの軽い運動を日常に取り入れることで、心身のリフレッシュにつながりやすくなります。
ウォーキングは、心拍数をほどよく上げることで血行が良くなり、全身への酸素供給が高まります。1日30分程度を目安に行うと、気分転換やストレスの軽減にも役立ちます。ヨガは深い呼吸を意識しながら行うことで、リラックス効果が高まり、自律神経の調整をサポートします。
運動に抵抗がある場合は、簡単なストレッチから始めるのがおすすめです。ストレッチには体の緊張をほぐし、血流を改善する効果が期待できます。激しい運動はかえって体に負担をかけることがあるため、無理のない範囲で続けることを意識しましょう。
リラックスできる環境を整える
PMSによる吐き気を和らげるためには、心と体が落ち着く環境づくりが重要です。ストレスは自律神経のバランスを乱し、吐き気や不調を強める要因になります。日常生活の中で意識的にリラックスできる時間を確保することで、症状の緩和が期待できます。リラックスを促す具体的な方法は次のとおりです。
- アロマやハーブティーを取り入れる
- 静かな場所で呼吸に意識を向ける
- 短時間の瞑想や音楽で気分転換する
- ぬるめのお湯にゆっくり浸かる
特にラベンダーやカモミールの香りは緊張を和らげやすく、ぬるめの入浴は副交感神経を優位にします。無理に頑張らず、自分が心地よいと感じる方法を見つけることが、PMSの吐き気と上手に向き合うポイントです。
市販薬や漢方、サプリメントを取り入れる
PMSによる吐き気への対処として、市販薬や漢方薬、サプリメントを活用する方法もあります。症状が強い場合は自己判断で使用せず、医師や薬剤師に相談したうえで適切な対応を検討することが大切です。妊娠の可能性がある場合や、すでに他の薬を服用している場合は、必ず専門家に確認してから使用しましょう。
漢方薬には体内の水分バランスや体調全体に働きかけるものがあり、PMSに伴う不調への対応として用いられることもあります。体質や症状によって合う・合わないがあるため、適切な種類の選択については医師や薬剤師への相談がおすすめです。
市販薬の中にはPMS特有の吐き気に十分な効果が期待できないものもあります。安全に使用するためにも、自己判断に頼らず、専門家のアドバイスを受けながら取り入れるようにしましょう。
症状が続くときは医療機関へ相談する
食事の見直しや運動、市販薬やサプリメントなどを試しても吐き気が改善しない場合は、婦人科などの専門医への相談を検討しましょう。医療機関で適切な診察や対応を受けることで、症状の軽減につながる可能性があります。
医師は一人ひとりの症状や体質に合わせて、無理のない対処法を提案してくれます。PMSには明確な診断基準がないため、日常生活に支障を感じている場合であれば、受診をためらう必要はありません。症状の現れ方には個人差があるため、つらさが強いときは自己判断に頼らず、専門家の力を借りることが大切です。
吐き気を伴う他疾患との違い
PMSによる吐き気は、他の病気や体調不良の症状と似ていることがあり、自己判断でPMSだと決めつけてしまうのは注意が必要です。ここでは、吐き気を伴う他の病気との見分け方を解説します。
妊娠初期症状
PMSによる吐き気は、生理が始まるおよそ1〜2週間前に現れ、生理の開始とともに徐々に落ち着くのが特徴です。妊娠初期に見られる吐き気、いわゆるつわりは、生理予定日を過ぎても症状が続くことが多く、妊娠によって分泌されるホルモンの影響が関係していると考えられています。
両者は症状が似ているため、見分けがつきにくい場合がありますが、生理が予定より遅れている場合は妊娠の可能性も視野に入れることが大切です。気になるときは、妊娠検査薬を使用したり、医療機関を受診して相談したりすると安心です。
食中毒や胃腸炎
食中毒や胃腸炎による吐き気は、摂取した食品やウイルス、細菌などが原因となって起こります。そのため、吐き気だけでなく、発熱や下痢、腹痛などの症状が同時に現れることが多いのが特徴です。PMSによる吐き気は主にホルモンバランスの変化が関係しており、発熱や激しい下痢などを伴うことは一般的ではありません。
38度以上の高熱が出る、強い下痢や嘔吐が続く場合は、PMSではなく食中毒や胃腸炎の可能性が考えられます。脱水を防ぐためにも、症状が重いときは早めに医療機関を受診しましょう。
片頭痛
片頭痛は、頭の片側がズキズキと脈打つように痛むのが特徴で、吐き気を伴うこともあります。生理周期と必ずしも一致して起こるわけではありませんが、月経に関連して症状が現れる人もいます。光や音、においに敏感になる人が多い点も特徴です。
PMSに伴う頭痛は生理前に現れ、生理が始まると次第に落ち着く傾向があります。痛みの性質も、片頭痛のような拍動性ではなく、頭全体が締め付けられるような鈍い痛みであることが多いとされています。
吐き気とともに強い頭痛が続く場合は、PMSだけでなく片頭痛の可能性も考えられます。市販の鎮痛薬で様子を見る方法もありますが、症状が気になる場合は脳神経内科や頭痛外来で相談すると安心です。
月経困難症
月経困難症は、生理痛が強く、日常生活に支障をきたす状態を指します。下腹部の強い痛みに加え、吐き気や腰痛、全身のだるさなどを伴うこともあり、痛みの程度には大きな個人差があります。PMSによる吐き気は生理の1〜2週間前から始まり、生理が始まると和らいでいく点が大きな違いです。
月経困難症の背景には、子宮内膜症などの病気が隠れている場合もあります。生理痛がつらい、痛みが年々強くなっていると感じる場合は、早めに婦人科を受診して相談することが大切です。
月経前不快気分障害(PMDD)は、月経周期に関連して起こる重い気分障害で、日常生活に大きな影響を及ぼすことが研究で知られています。PMDDでは、抑うつ気分や強い不安、イライラ、集中力の低下などの精神的な症状が特に顕著に現れるのが特徴です。
PMSによる吐き気か他の病気による症状かを見極めるため、必要に応じて医療機関を受診しましょう。
まとめ
PMSに伴う吐き気は、多くの女性が抱えるつらい不調の一つです。その背景には、主に次の要因が関係しています。ホルモンバランスの変化、水分が体内に溜まりやすくなることによる胃腸への圧迫、そしてストレスによる自律神経の乱れです。
吐き気の症状は、日々の生活習慣を見直したり、セルフケアを取り入れたりすることで、和らげられる場合があります。胃腸にやさしい食事を意識することや、無理のない運動、リラックスできる環境づくりを心がけましょう。
それでも症状が重く、日常生活に支障を感じる場合は、婦人科を受診し専門的なアドバイスや対応を受けることが大切です。自分に合ったPMSとの付き合い方を見つけ、少しでも快適な毎日を目指しましょう。
参考文献
Emily Cary, Paul Simpson.Premenstrual disorders and PMDD - a review. Best Pract Res Clin Endocrinol Metab, 2024, 38, 1, p.101858
