男性が子宮頸がんワクチンの接種を検討する意義|期待できる効果も解説
子宮頸がんワクチンは女性向けという印象を持たれやすいものの、男性にとっても重要な意味を持つワクチンです。男性が接種することで、中咽頭がんなどの発症リスクを抑えられる可能性があり、自身の健康だけでなく、パートナーを守ることにもつながると考えられています。
HPV(ヒトパピローマウイルス)は身近なウイルスで、海外の報告では、性行為の経験がある女性の約50〜80%が生涯に一度は感染するとされています。海外では男性への接種も広く行われており、日本においても希望すれば接種が可能です。
本記事では、医師の監修のもと、男性がHPVワクチンを接種する必要性や期待できる効果、安全性、費用について解説します。ワクチンについて正しい知識を得たうえで、接種を検討する際の参考にしてください。
橋本駅南口から徒歩1分の長谷川レディースクリニックでは、生理不順やPMS(月経前症候群)など、女性特有の症状に関する検査・治療にも対応しています。経験豊富な専門医が、一人ひとりのお悩みに寄り添いながら、適切な医療サポートを提供いたします。
また当院では、神奈川県相模原市・淵野辺駅から徒歩2分のソフィアレディスクリニックと連携し、婦人科および不妊治療においてスムーズな連携体制を構築しています。検査結果や治療方針の共有により、患者さまにとって安心かつ効率的な診療環境をご提供いたします。
男性がHPVワクチン接種を検討すべき理由
男性がHPVワクチン接種を検討すべき理由を解説します。
HPVは男性も感染する可能性があるウイルス
HPVは日常的に存在するウイルスです。主に性的接触を通じて、皮膚や粘膜から感染します。性交渉の経験がある人の多くは、生涯のうちに一度は感染するとされています。HPVには200種類以上の型があり、多くの場合は感染しても自覚症状がなく、体の免疫機能によって自然に排除されます。
一部のHPVが体内に長く残ると、男性においてもがんなどの疾患を引き起こす可能性があります。男性がHPV感染によって発症する可能性のある主な病気は、次の4つです。
- 中咽頭がん:舌の付け根や扁桃など、のどの奥に生じるがん
- 肛門がん:肛門周囲に発生するがん
- 陰茎がん:男性器に発生するがん
- 尖圭(せんけい)コンジローマ:性器やその周辺、肛門などにイボができる性感染症
HPVは男性の健康にも影響を及ぼす可能性のあるウイルスです。ワクチン接種は、これらの病気を発症するリスクを低減する方法の一つとされています。
パートナーを守る「集団免疫」の役割
HPVは人から人へ感染するウイルスです。ワクチンを接種することでHPVに感染しにくくなれば、周囲の人へウイルスを広げてしまう可能性も下げることができます。性交渉によるパートナー間の感染は、いわゆる「ピンポン感染」と呼ばれる現象により、互いに感染を繰り返してしまうケースがあるため、注意が必要です。
多くの人が免疫を持つことでウイルスが広がりにくくなり、ワクチンを接種できない人を間接的に守ることも可能です。社会全体で感染拡大を抑える仕組みを「集団免疫」と呼びます。
子宮頸がんは女性にとって重要な健康課題の一つであり、近年では機械学習を活用した生存予測などの研究も進められています。病気を未然に防ぐ予防の重要性が医学的に注目されています。アメリカやイギリスなど多くの国では、男性も公費によるワクチン接種の対象とされています。
男性がHPVワクチンを接種することは、自身の健康だけでなく、大切な人を守るための選択肢の一つです。
男性のHPVワクチン接種で期待できる効果
男性のHPVワクチン接種で期待できる効果は以下のとおりです。
- 中咽頭がん・肛門がん・陰茎がんの発症リスク低減
- 尖圭コンジローマの予防
中咽頭がん・肛門がん・陰茎がんの発症リスク低減
HPVが関与するとされる男性のがんには、主に中咽頭がんや肛門がん、陰茎がんの3種類があります。HPVワクチンは、すでに発症したがんを治療するものではありませんが、HPVへの感染を予防することで、将来的ながんのリスクを下げる可能性があります。
ウイルスの体内への侵入を抑えることで、将来的にこれらのがんを発症するリスクを下げる効果が期待されています。
尖圭コンジローマの予防
HPVワクチンは、尖圭コンジローマと呼ばれる性感染症の発症リスクを低下させる効果も期待されています。尖圭コンジローマはHPV感染が原因で、性器や肛門の周囲にイボが生じる病気です。命に関わるケースは多くありませんが、日常生活や精神面に大きな影響を及ぼすことがあります。患者さんが感じやすい主な負担は、次の3つです。
- 心理的なストレス
- 再発に対する不安
- パートナーへの感染リスク
治療には外用薬や凍結療法などがありますが、症状が落ち着くまでに時間がかかり、長期的な経過観察が必要となることもあります。ワクチン接種によって原因となるHPVへの感染自体を防ぐことが、発症予防の選択肢の一つと考えられています。
接種前に知っておきたい基本的なポイント
HPVワクチンを接種する前に把握しておきたい主なポイントは、次の5つです。
- 男性に推奨されているHPVワクチンの種類
- 接種に適した時期
- 必要となる接種回数
- 接種を受けられる医療機関
- 接種にかかる費用
男性に推奨されているHPVワクチンの種類
日本で使用できるHPVワクチンは3種類ありますが、現在、男性への接種が正式に承認されているのは4価ワクチン(ガーダシル®)のみです。4価ワクチンは、子宮頸がんなどに関与するHPV16型・18型に加え、尖圭コンジローマの原因となる6型・11型の感染を防ぐことが特徴です。
ワクチンにより、HPV感染そのものを予防することで、中咽頭がんや肛門がんなどの発症リスクを下げる効果や、尖圭コンジローマの予防が期待されています。感染を防ぐことはパートナーへのウイルスの伝播を抑えることにもつながり、結果として女性の子宮頸がん予防にも寄与します。
一部の医療機関では任意接種(自費)として、男性でも9価ワクチン(シルガード9®)を接種できる場合があります。現時点では男性への公的承認はされておらず、副反応が生じた際の救済制度などは対象外となるため、接種を検討する際には十分な理解が必要です。
接種に適した時期
HPVワクチンは、性交渉を経験する前に接種することで、高い予防効果が期待できるとされています。世界的には10代前半での接種が推奨されています。日本では9歳以上から接種が可能です。すでに性交渉の経験がある場合でも、未感染のHPV型に対しては予防効果が期待できます。
年齢の目安としては、26歳までの方はワクチン接種を前向きに検討することが勧められています。27歳以上でも接種自体は可能ですが、年齢とともにHPVにすでに感染している可能性が高くなり、予防効果が限定的になる場合があります。
そのため接種を希望する場合は、医師と相談したうえで、期待できる効果や費用面について十分に確認することが大切です。
必要となる接種回数
4価HPVワクチンは9歳以上から接種が可能で、合計3回の接種が必要です。原則として、1年以内に3回すべての接種を完了することが推奨されています。途中で接種を中断せず、最後まで受けきることが重要です。
標準的な接種スケジュールでは、1回目の接種から2か月後に2回目、さらにその4か月後(1回目から数えて6か月後)に3回目を接種します。やむを得ず標準的な間隔を守れない場合でも、2回目は1回目から1か月以上、3回目は2回目から3か月以上の間隔をあければ接種が可能とされています。
接種を受けられる医療機関
HPVワクチンは、小児科や内科、泌尿器科、産婦人科、皮膚科など、さまざまな診療科で接種を受けることができます。まずは、かかりつけ医に男性のHPVワクチン接種が可能か相談してみましょう。
近くに対応している医療機関が見つからない場合は、お住まいの自治体の公式Webサイトを確認すると、接種可能な医療機関の情報が掲載されていることがあります。ワクチンを予約する際には、事前に次の点を確認しておくと安心です。
- 男性のHPVワクチン接種に対応しているかどうか
- 接種にかかる費用の目安
- 接種当日に必要な持ち物
かかりつけ医や自治体の情報を確認し、準備を整えて接種を受けましょう。
接種にかかる費用
男性のHPVワクチン接種は任意接種に位置づけられているため、原則として費用は全額自己負担となります。金額は医療機関ごとに異なりますが、4価ワクチンを3回接種した場合、総額でおおよそ5〜6万円が目安とされています。
現時点では国による公費助成はありませんが、自治体によっては男性のHPVワクチン接種に対して独自の助成制度を設けている場合があります。助成の対象年齢や補助額は地域によって異なるため、詳しくはお住まいの自治体の公式ホームページや保健センターで確認することをおすすめします。
子宮頸がんワクチンの副反応や安全性
子宮頸がんワクチンの副反応や安全性に関して、以下の3つを解説します。
- 主な副反応
- 軽い症状に対するセルフケア
- 重篤な症状が現れた際の対処法
主な副反応
HPVワクチン接種後に現れる反応は、比較的よく見られる症状と、まれに起こる重い症状の2種類に分類されます。
接種後には、注射した部位に痛みや赤み、腫れ、かゆみなどが見られることがあります。免疫細胞が反応することで起こるもので、10人に1人以上の割合で報告されています。
発熱や頭痛、倦怠感、筋肉痛、関節痛、吐き気、腹痛など、全身に症状が現れることもあります。免疫が活性化する過程で起こり、100人中1〜10人程度にみられます。多くの場合、これらの症状は2〜3日ほどで自然に治まります。
ごくまれに以下の重篤な症状が起こることもあります。
- アナフィラキシー:呼吸困難や全身のじんましんなどのアレルギー反応
- ギラン・バレー症候群:手足に力が入らなくなるなどの神経症状
- 急性散在性脳脊髄炎(ADEM):頭痛、嘔吐、意識の混濁などの症状
重い症状はまれですが、万が一に備えて知っておくことが大切です。
軽い症状に対するセルフケア
注射後に腕の痛みや腫れを感じても、慌てる必要はありません。無理に腕を動かしたり、接種部位を強くこすったりしないよう注意しましょう。痛みや腫れが気になる場合は、清潔なタオルで包んだ保冷剤を当てて軽く冷やすと、症状の緩和に効果があります。
発熱や頭痛が出た場合は、安静にすることが大切です。十分な水分補給を心がけ、無理をせず体を休めてください。アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの市販の解熱鎮痛剤も症状の緩和に有効ですが、薬に対するアレルギーがある方や、他の薬を服用している方は、使用前に医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
通常、こうした軽い症状は数日以内に自然に回復しますが、もし数日経っても改善しない場合や、症状が悪化するようであれば、速やかに接種を受けた医療機関に相談してください。
重篤な症状が現れた際の対処法
副反応の多くは軽度で、通常は数日以内に自然と回復しますが、まれにアナフィラキシーなどの重篤な症状があらわれることがあります。息苦しさや喘鳴(ゼーゼーという呼吸音)、顔や唇、舌の腫れ、全身に広がるじんましん、意識がもうろうとするなどの異変が見られた場合は、すぐに医療機関を受診してください。緊急時には迷わず救急車を呼びましょう。
また、接種後に不安がある場合や症状が長引いている場合には、以下の相談先を利用できます。
- 接種を受けた医療機関
- お住まいの市区町村の相談窓口
- 厚生労働省感染症・予防接種相談窓口
予防接種により重篤な健康被害が生じた場合には「予防接種健康被害救済制度」によって医療費などの支援を受けられる可能性があります。制度の利用を検討する際は、接種を行った医師またはお住まいの自治体の窓口へご相談ください。
まとめ
HPVワクチンは女性向けの印象が強いものの、男性にも中咽頭がんなどの発症リスクを下げる効果が期待されています。パートナーの子宮頸がん予防や集団免疫の形成にもつながります。性交渉前の接種が理想的ですが、性交渉の経験がある場合でも、まだ感染していないタイプのHPVに対する予防効果が見込めます。
26歳までの方は、接種を前向きに検討してみましょう。費用は基本的に自己負担ですが、一部の自治体では男性への接種を対象とした助成制度を導入しています。副反応の多くは軽く、自然に回復しますが、重篤な症状が疑われる場合には速やかに医療機関を受診してください。
橋本駅南口から徒歩1分の長谷川レディースクリニックでは、PMS(月経前症候群)や生理不順など、女性のライフステージに寄り添う医療を提供しています。経験豊富な医師が一人ひとりのお悩みに丁寧に対応しておりますので、気になる症状やご相談がありましたらお気軽にご来院ください。
参考文献
- Ana Katherine Gonçalves, Ricardo Ney Cobucci, Hugo Marcus Rodrigues, Amanda Gosson de Melo, Paulo César Giraldo. Safety, tolerability and side effects of human papillomavirus vaccines: a systematic quantitative review. Braz J Infect Dis, 2014, 18(6), p.651–659
- 厚生労働省:「HPVワクチンに関するQ&A(令和7年)」
- 厚生労働省:「予防接種健康被害救済制度」
- 厚生労働省:「HPVワクチンについて(令和6年)」
- 東京都保健医療局:「HPVワクチンの男性への接種について(令和7年)」
