不妊治療にかかる費用は?治療別の費用と活用できる助成制度を解説
不妊治療には高額な費用がかかるイメージがありますが、2022年4月より、一部の不妊治療が条件付きで保険適用の対象となっています。不妊治療にはさまざまな種類があり、治療のステージによっても費用には大きな幅があります。
この記事では、保険適用される不妊治療の内容とその費用について詳しくご紹介します。助成制度を活用した費用の軽減方法や、妊娠中から出産までにかかる費用についても取り上げていますので、ご自身にとって利用可能な制度や保険の確認にお役立てください。
橋本駅南口から徒歩1分の長谷川レディースクリニックでは、生理不順やPMS(月経前症候群)など、女性特有の症状に関する検査・治療にも対応しています。日本産科婦人科学会の認定を受けた医師が在籍し、患者さまの状態に応じて適切に対応しています。保険適用の範囲や制度についても丁寧にご説明しております。
また当院では、神奈川県相模原市・淵野辺駅から徒歩2分のソフィアレディスクリニックと連携し、婦人科および不妊治療においてスムーズな連携体制を構築しています。検査結果や治療方針の共有を行っており、スムーズな診療連携が可能です。
不妊治療の費用目安:治療別に見る費用と保険適用の詳細
不妊治療は生理周期に合わせて計画的に進める必要があり、治療の内容やタイミングによっても費用が変動します。主な治療法について、それぞれの1周期あたりの治療内容と費用の目安をご紹介します。
タイミング法の場合
タイミング法は排卵日を予測し、それに合わせて性交のタイミングを調整する治療法です。医療機関では超音波検査やホルモン値の測定を行い、排卵のタイミングを見極めます。排卵日の2日前が最も妊娠しやすいとされており、排卵日を含めた前後に性交のタイミングをとることが推奨されます。
1周期あたりの検査・診察費用は数千〜1万円程度で、排卵誘発剤を使用する場合は3万円前後になることがあります。
人工授精の場合
人工授精は採取した精液を医療機関で処理し、排卵のタイミングに合わせて女性の子宮内に注入する方法です。人工という言葉に抵抗感を持つ方もいますが、体内での受精過程は自然妊娠と同様です。
人工授精は、精子の運動率や濃度が低い場合や、勃起・射精の障害があるケースでも適用が検討されます。1周期あたりの検査・通院費はおよそ2〜3万円で、人工授精そのものの費用は1回あたり5,460円となっています。
体外受精の場合
体外受精とは、体外で卵子と精子を受精させてから子宮へ戻す治療法です。排卵誘発剤を使って複数の卵子を体内で育て、成熟した卵子を採取します。その後、卵子と精子を同じ容器に入れて受精を促し、数日間培養した後に子宮へ戻します。
排卵誘発や採卵の処置が必要となるため、女性の体への負担が大きく、通院頻度も高まります。1周期あたりの検査や通院にかかる費用は、採卵から培養までで10〜15万円、胚移植には4〜6万円程度が必要です。
顕微授精の場合
顕微授精は精子を顕微鏡下で1匹選び、直接卵子に注入する方法です。乏精子症や無精子症など、男性側に原因がある場合にも選ばれる治療法で、女性側の体への処置は体外受精と同様です。
排卵誘発や採卵、受精後の培養を経て子宮に戻すプロセスとなるため、女性にかかる負担も大きくなります。検査や通院の費用は体外受精よりもやや高く、1周期あたりの総費用はおよそ14〜24万円程度です。
顕微鏡下精巣内精子採取術の場合
顕微鏡下精巣内精子採取術(micro-TESE)は精巣内から精子を直接採取する外科的手術で、無精子症や重度の乏精子症の方に適用されます。顕微鏡を使って精巣の組織を詳細に観察し、精子が残っていそうな部分から組織を採取します。
顕微鏡下精巣内精子採取術も保険適用されますが、実施には医師の診断が必要です。診断に必要な検査と手術費用は約8.5万円で、顕微授精を行う際には追加で1.5万円ほどかかります。初診料や処方薬代を含めると、総額で11万円前後が目安です。
不妊治療の自己負担を軽減する3つの制度活用法
不妊治療は保険適用されるようになったとはいえ、治療回数が増えるごとに自己負担額も大きくなります。費用負担を少しでも軽減するために活用できる制度が、以下の3つです。
- 高額療養費制度
- 民間医療保険
- 医療費控除
それぞれの制度の特徴や注意点を理解し、賢く活用することで、治療にかかる経済的負担を抑えることができます。
高額療養費制度
高額療養費制度とは1か月間に支払った医療費が所得に応じた自己負担限度額を超えた場合、その超過分が後から払い戻される制度です。自己負担の上限額は、加入している健康保険と世帯の所得水準によって決まります。
高額療養費制度には適用期間と対象範囲に注意が必要です。1月と2月にまたがって高額な治療を受けた場合、それぞれの月ごとに自己負担上限額が適用されるため、合算はできません。保険適用されない自由診療(自費診療)やオプション治療は、この制度の対象外です。
治療前に保険適用の範囲をしっかり確認しておくことが大切です。
民間医療保険
人工授精や体外受精における採卵、胚移植といった治療が、保険適用により手術として分類されるようになったことで、民間の医療保険に加入している方は、手術給付金の請求が可能になるケースがあります。
保険適用外の高度な治療を行った場合でも、先進医療特約が付帯されていれば先進医療給付金が受け取れる可能性があります。いずれも給付の対象かどうかは契約内容によるため、加入している保険の保障内容や条件を必ず確認してください。
医療費控除
医療費控除は1月1日~12月31日までの1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合、所得控除を受けられる制度です。不妊治療は、保険診療・自由診療を問わず、治療を目的とした費用であれば医療費控除の対象となります。
控除額は年間に実際支払った医療費から、保険金や高額療養費などで補填された金額と10万円(または所得の5%のいずれか低い方)を差し引いた額となります。実際に還付される金額は、その人の所得税率によって異なります。
生計をともにする家族の医療費を合算して申告することも可能です。夫婦で不妊治療を行っている場合には、合算した医療費を一方の確定申告で申請することで、控除の対象となります。
妊娠から出産までにかかる費用は平均約60万円
不妊治療とは別に、一般的な妊娠から出産までにかかる費用は平均して約60万円とされています。妊娠期間中には、通常14回程度の妊婦健診が予定されており、1回の受診でおよそ3,000〜1万円の費用が必要です。
出産時の入院費用は、自然分娩の場合でおおよそ50万円程度が平均となっています。無痛分娩を選択したり、個室での入院を希望したりする場合は、さらに費用が上乗せされます。入院費用は地域によって異なる点には注意しましょう。
妊婦健診と出産を別の医療機関で行う予定がある方は、早めに出産予定の病院のホームページなどで費用を確認しておくと安心です。
妊娠・出産時に利用できる支援制度と助成金
妊娠から出産までの費用負担を軽減するために、以下の3つの制度が利用できます。
- 妊婦健診費用の助成制度
- 出産育児一時金
- 医療費控除
妊婦健診の助成制度では、母子手帳の交付時に自治体から妊婦健診の補助券が配布されます。助成の内容や金額は自治体によって異なりますが、補助券以外にも妊娠・出産に関連する独自の支援制度を設けている自治体もあります。
出産育児一時金は、健康保険または国民健康保険に加入していれば出産1人あたり50万円が支給される制度です。直接支払制度を利用することで、医療機関が保険者から50万円を受け取り、退院時には差額分だけを支払えば良い仕組みになっています。
医療費控除では、妊娠と診断された後の妊婦健診や検査費用、通院にかかる交通費なども控除対象となります。これらを上手に活用することで、妊娠・出産にかかる経済的な負担を大きく軽減できます。
2022年4月からの不妊治療における保険適用条件
2022年4月より不妊治療の一部が条件付きで保険適用となりました。保険適用されるのは人工授精や体外受精、顕微授精の3つの治療法です。
適用には条件があり、治療開始時点で女性が43歳未満であることが必要です。保険適用での治療回数には上限があり、年齢に応じて最大6回までと定められています。現時点では男性側の年齢に制限は設けられていません。
「特定不妊治療費助成制度」は2022年3月で終了
不妊治療の保険適用が始まったことに伴い、従来の特定不妊治療費助成制度は2022年3月末で廃止されました。この制度では、体外受精および顕微授精に対し、1回あたり30万円、受精中止となった場合でも10万円が一律で助成されていました。実際の治療費にかかわらず、定額の支給がされる点が特徴でした。
体外受精の費用が40万円だった場合、助成制度を利用すれば自己負担は10万円で済んでいたケースもあります。保険適用後は、費用の3割を自己負担するため、同じ治療で12万円の自己負担となり、以前より支払額が増える可能性もあります。
保険適用後は自己負担割合が3割となるため、治療内容によっては助成制度利用時よりも自己負担が高くなるケースもあります。保険の対象とならない治療法も依然としてあるため、治療方針を選ぶ際には保険適用の範囲を十分に確認しておくことが重要です。
不妊治療に関するよくある4つの質問と回答
不妊治療を検討する際、多くの方が疑問に感じる質問を解説します。
不妊治療の費用は分割払いできる?
多くの不妊治療クリニックでは、患者の経済的な負担を軽減する目的で分割払いに対応しています。特に体外受精や顕微授精など高額な治療では、毎月の支払い額を抑えることで治療の継続がしやすくなります。
一部のクリニックでは、独自の分割払い制度を設けていたり医療ローン会社と提携していたりする場合もあります。クレジットカードでの支払いが可能なクリニックも多く、カードの分割機能も利用できます。分割払いには手数料が発生することがあり、最終的な支払い総額が増える場合があるため、契約前に支払い方法や条件を確認しておくことが重要です。
治療を途中でやめた場合の費用はどうなる?
体外受精や顕微授精などの治療を途中で中止した場合、実際に実施した処置や検査、投薬にかかる費用のみが請求されます。採卵前に中止した場合は、検査や投薬分まで、採卵後に中止した場合は採卵費用までが対象となります。
ほとんどの医療機関では、予定していた治療全体ではなく実際に行った処置に対してのみ料金が発生します。料金体系はクリニックごとに異なるため、治療前に中断時の費用について事前に確認しておくと安心です。
保険適用される治療については、途中で中止してもその治療は1回としてカウントされるケースが多いので注意が必要です。
男性不妊の検査や治療費用はどのくらい?
男性不妊に対する検査のうち、基本的な精液検査は保険適用となっており、数千円程度で受けることができます。詳細な検査が必要な場合には、精子の運動性や形態、DNAの状態などを調べる検査があり、それぞれ1〜3万円程度の費用がかかることがあります。
治療に関しては、軽度の男性不妊の場合は薬物療法が行われ、月数千円程度の費用で済むことが一般的です。重度の場合には、精巣から直接精子を採取するTESE(精巣内精子採取術)という手術が必要になり、10〜30万円程度の費用がかかることもあります。
男性不妊の治療も一部は保険の対象となっているため、まずは泌尿器科や男性不妊専門の外来で相談することをおすすめします。
不妊治療専門クリニックと一般産婦人科の費用の違いは?
不妊治療専門クリニックと一般の産婦人科では、設備や専門性に差があり、費用も異なる場合があります。専門クリニックでは体外受精などの高度生殖医療(ART)を提供しており、治療件数や実績に基づいた計画が立てられる傾向があります。
日本産科婦人科学会ARTデータブック2022によると、胚移植1回あたりの出生率は30〜34歳で約23.7%、35〜39歳で約18.2%、40〜42歳で約10.2%と、年齢によって大きな差があります。年齢や治療歴を踏まえて適切な施設を選ぶことが重要です。
一般の産婦人科では初期段階の検査や治療(タイミング法・排卵誘発など)が受けられますが、体外受精が必要な場合は専門施設への紹介が一般的です。保険診療の範囲内では費用差は少ないものの、自費診療では料金が施設ごとに異なります。事前に複数の医療機関を比較し、自分に合った施設を選ぶことが大切です。
まとめ
不妊治療の費用は治療法によって大きく異なるため、治療を始める前に不妊治療に特化した産婦人科や専門クリニックに相談することが大切です。こうした医療機関では、初診時に詳細な検査を実施し、その結果をもとに個々に合った治療プランを提案してくれます。
治療にかかる費用は、あらかじめ具体的な見積もりを提示してもらえるため、総額の把握がしやすくなります。保険適用の範囲や活用できる公的制度についても丁寧に説明してもらえるので、制度を有効活用するためにも早めの相談が大切です。
無理なく治療を継続するためにも、まずは専門医に相談することから始めてみましょう。
参考文献
- 厚生労働省:不妊治療に関する支援について(令和4年)
- 日本産科婦人科学会:ARTデータブック2022
