妊娠初期のおりものの特徴を解説|生理前との違いもチェック
新しい命を授かった喜びとともに、体の変化に戸惑うことが多いのが妊娠初期です。「おりものの変化」は、多くの妊婦さんが経験する症状の一つです。妊娠初期のおりものは、赤ちゃんを守る役割を持っていますが、ホルモンの影響で量や状態が変わりやすく、不安に感じる方も少なくありません。
この記事では、妊娠初期のおりものの役割や変化、正常・異常の見分け方、生活習慣や食事のアドバイスについて詳しく解説します。妊娠初期の方やこれから妊娠を考えている方も、安心して妊娠生活を送るための参考にしてください。
橋本駅南口から徒歩1分の長谷川レディースクリニックでは、生理不順やPMS(月経前症候群)など女性特有の体調変化へのご相談をはじめ、男性不妊に関する検査や治療にも対応しています。経験豊富な専門医が、一人ひとりのお悩みに寄り添いながら、適切なサポートを提供します。
また、当院は神奈川県相模原市のソフィアレディスクリニック(淵野辺駅から徒歩2分)と連携し、婦人科診療や不妊治療を共同で行っています。両院間で検査結果や治療方針を共有することで、よりスムーズで質の高い医療体制を実現しています。
少しでも不安や気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。
妊娠初期におけるおりものの変化とその役割
妊娠初期におけるおりものの変化について、以下を解説します。
- 妊娠初期のおりものが果たす役割
- 妊娠初期はホルモンの影響でおりものが増える
- 妊娠初期に見られるおりものの変化のタイミング
妊娠初期のおりものが果たす役割
妊娠初期のおりものは、外部から細菌やウイルスの侵入を防ぐ防御機能を持っています。腟内を酸性に保つことで、病原体が繁殖しにくい環境を作り、赤ちゃんを守る大切な役割を果たします。お母さんの免疫システムは、赤ちゃんを異物と認識しないように抑制されているため、感染を防ぐためにおりものの働きがより重要です。
おりものが増えることで腟内が常に洗い流され、清潔な状態が保たれます。おりものが増えることは、赤ちゃんを危険から守るための自然な体のしくみです。
妊娠初期はホルモンの影響でおりものが増える
妊娠すると、女性ホルモンの一つであるエストロゲンの分泌が活発になります。エストロゲンは、子宮内膜を厚くして受精卵が着床しやすい環境を整える大切なホルモンです。エストロゲンにはおりものの分泌を促す作用があるため、妊娠初期はおりものの量が増える傾向です。個人差はありますが、下着がすぐに湿ってしまうほど量が増えることもあります。
妊娠初期のおりものは、子宮頸管から分泌される「頸管粘液」が増えるため、水っぽくサラサラした状態になることが多いです。
妊娠初期に見られるおりものの変化のタイミング
妊娠初期に起こるおりものの変化には個人差がありますが、早い人では生理予定日の前後から兆候が現れることがあります。生理予定日は妊娠4週目にあたり、この頃はちょうど受精卵が子宮内膜に着床する時期にあたります。着床がうまくいくと、ホルモンバランスが変化し、おりものの量が増える傾向です。
おりものの状態については、水っぽいものや粘り気のあるものなど、個人によってさまざまです。
妊娠初期に見られるおりものの正常・異常パターン
妊娠初期は、ホルモンバランスの変化によっておりものの量や状態が変わりやすい時期です。妊娠初期に見られるおりものについて、以下の3つのポイントを解説します。
- 正常なおりものの特徴
- 異常なおりものの特徴
- 異常なおりものに気づいたら産婦人科で相談する
ご自身の症状や状態と照らし合わせて、体からのサインを見極める参考にしてください。
正常なおりものの特徴
妊娠初期の正常なおりものの特徴は、以下のとおりです。
- 量:下着が少し湿る程度
- 色:無色透明〜白っぽいまたはやや黄色
- におい:無臭またはわずかに酸っぱい(乳酸菌の働き)
妊娠初期には、子宮頸管粘液の量が増えるため、生卵の白身のような少し粘り気のあるおりものが見られることがあります。子宮頸管粘液は、精子の子宮内への移動をスムーズにする役割を担っています。
異常なおりものの特徴
通常とは異なる量や色、におい、質感、またはかゆみや痛みなどの症状がある場合は注意が必要です。腟や子宮の感染症、その他の疾患が隠れているサインかもしれません。異常なおりものの特徴は以下のとおりです。
項目 |
状態 |
考えられる原因・注意点 |
量 |
極端に多い |
異常の可能性 |
極端に少ない |
細菌感染のリスク上昇 |
|
色 |
ピンク色・茶色っぽい |
着床出血または流産の可能性 |
緑色や黄色で膿のよう |
細菌感染症の疑い |
|
灰色っぽい |
トリコモナス腟炎の可能性 |
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におい |
生臭い |
細菌性腟症の可能性 |
カビ臭い・腐敗臭 |
トリコモナス腟炎などの感染症の可能性 |
|
状態 |
泡状 |
トリコモナス腟炎の可能性 |
酒粕状 |
カンジダ腟炎の可能性 |
|
その他の症状 |
外陰部のかゆみ・痛み |
感染症や炎症の可能性 |
排尿時の痛み |
感染症や尿路トラブルの可能性 |
|
下腹部の痛み |
子宮や卵巣の炎症などの可能性 |
研究によると、細菌性腟炎を発症した人は、トリコモナス感染症や淋菌感染症など他の感染症にもかかりやすいことがわかっています。症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、原因を特定して適切な治療を受けることが大切です。
異常なおりものに気づいたら産婦人科で相談する
妊娠初期に異常なおりものが見られた場合は、自己判断せず、速やかに産婦人科を受診しましょう。市販薬の使用や様子見で放置することは、母体や赤ちゃんにとってリスクが高く、大変危険です。妊娠週数が進むにつれて使用できる薬が限られることもあるため、早めの受診が安心・安全な妊娠生活につながります。
医療機関では、おりものの検査を行い、原因を明らかにしたうえで、症状に応じた適切な治療を受けることができます。違和感や異常を感じたら、早めに医師へ相談しましょう。
妊娠初期のおりものの変化と安心して過ごすためのケア方法
妊娠初期のおりものに関して、安心して妊娠生活を過ごすために以下を解説します。
- 妊娠初期のおりものの変化による不安を軽減する
- 妊娠初期に意識したいおりものケアと生活習慣
- 妊娠初期のおりものケアに役立つ食事
妊娠初期のおりものの変化による不安を軽減する
妊娠初期にはホルモンバランスの変化により、おりものの量が増えることが一般的です。腟内の清潔を保ち、赤ちゃんを感染から守るための自然な働きです。ただし、おりものの量や色、においに普段と異なる変化が見られる場合は注意が必要です。おりものが異常に多く、下着が濡れるほど水っぽい状態が続く場合は、感染症などが原因の可能性もあります。
色やにおいに違和感がある場合も要注意です。特に緑色や黄色がかった膿のようなおりものは、細菌感染を疑う必要があります。妊娠初期は免疫力が低下しやすい時期でもあるため、おりものの異常に気づきにくいことがあります。大丈夫と感じても、実際には治療が必要なケースもあるため、少しでも不安を感じたら医師に相談しましょう。
妊娠初期に意識したいおりものケアと生活習慣
赤ちゃんと自分自身の健康を守るために、以下の生活習慣を心がけましょう。
- 清潔な下着を身につける
- 外陰部の洗浄はやさしく洗う
- トイレ後は前から後ろに向かって拭く
- おりものシートはこまめに交換する
- 十分な睡眠をとる
ストレスをためないようリラックスする時間を意識的に作ることも、免疫機能を保つために重要です。妊娠初期を安心して過ごすためにも、体のサインに耳を傾けながら、無理のない範囲で生活習慣を整えましょう。
妊娠初期のおりものケアに役立つ食事
妊娠初期に特に意識して摂りたい栄養素は以下のとおりです。
- 葉酸:細胞分裂や成長を助け、赤ちゃんの先天性異常リスクを低減
- 鉄分:赤血球の生成を促し、貧血予防に役立つ
- カルシウム:赤ちゃんの骨や歯の形成に必須
- ビタミンD:カルシウムの吸収を助け、骨や歯の発育をサポート
妊娠初期の食生活は、お腹の赤ちゃんの健やかな成長とママ自身の健康維持の両方に欠かせません。バランスの良い食事は、おりものの状態を整えるだけでなく、妊娠中のさまざまなトラブル予防にもつながります。妊娠初期はつわりによる食欲低下が起こりやすい時期ですが、可能な範囲でバランスの良い食事を心がけましょう。
水分不足はおりものの量を減らし、腟内の自浄作用を低下させて細菌感染リスクを高める可能性があります。こまめな水分補給を意識し、水やお茶などで1日1.5〜2リットル程度を目安に摂取しましょう。水分は老廃物の排出や体温調節など、妊娠中の体に欠かせない役割を担っています。
まとめ
妊娠初期にはホルモンバランスの影響により、おりものの量や性質に変化が見られるのが一般的です。通常の妊娠初期のおりものは、無色透明または白っぽく、ヨーグルトのような酸味のあるにおいがすることがあります。
量が異常に多かったり、生臭さ・カビ臭さ・腐敗臭のような不快なにおいがあったりする場合は、感染症などの異常のサインである可能性もあります。異常な症状が見られた際は自己判断で行動せず、必ず産婦人科を受診し、安心な妊娠生活を送りましょう。
参考文献
Makella S Coudray, Purnima Madhivanan.Bacterial vaginosis-A brief synopsis of the literature.Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol,2020,245,,p.143-148