卵巣の痛みはなぜ起きるのか?考えられる疾患と対処方法をわかりやすく解説
下腹部に違和感や痛みを覚えたことはありませんか?生理痛と似た症状ですが、下腹部の痛みには思わぬ病気が隠れている可能性があります。原因に応じた適切な治療が必要なこともあります。この記事では、卵巣に痛みを感じる際に考えられる以下のポイントをご紹介します。
- 卵巣に痛みを感じる主な5つの要因
- 卵巣に痛みを感じたときの症状とセルフチェックのポイント
- 卵巣の痛みへの対応と治療法
橋本駅南口から徒歩1分に位置する長谷川レディースクリニックでは、生理不順やPMS(月経前症候群)といった女性特有の体調の変化に関するご相談に対応しているほか、男性不妊に関する検査・治療も実施しています。専門の医師が、一人ひとりのお悩みに丁寧に寄り添い、最適なサポートを提供しています。
さらに当院では、神奈川県相模原市にある淵野辺駅から徒歩2分のソフィアレディスクリニックと連携し、婦人科および不妊治療を行っています。両院間で検査結果や治療方針をスムーズに共有することで、より効率的で安心できる治療環境を整えています。少しでも不安や気になる症状がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
卵巣に痛みを感じる主な5つの要因
卵巣の痛みには、以下の5つの原因が考えられます。
- 排卵に伴う痛み(排卵痛)
- 子宮内膜症
- 卵管炎・卵巣炎
- 卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)
- 卵巣捻転(らんそうねんてん)
卵巣捻転は、治療が遅れると卵巣の機能障害を引き起こすリスクがあります。原因や症状を理解し、早めに医療機関を受診しましょう。
排卵に伴う痛み(排卵痛)
排卵痛とは、卵巣から卵子が排出される際に感じる痛みです。生理開始のおおよそ2週間前に、下腹部の片側または両側にチクチクとした感覚や鈍痛が現れることがあります。痛みの強さには個人差があり、日常生活に支障をきたすほどの強い痛みを訴える方もいます。排卵痛は数時間〜長くても3日程度で自然に治まることが多いです。
排卵痛を生理痛と混同してしまい、適切なケアを行わずに過ごしてしまうこともあります。排卵痛特有の症状を理解し、生理痛との違いを把握することで、より正しい対応が可能です。
子宮内膜症
子宮内膜症とは、本来は子宮の内側にある「子宮内膜」と似た組織が、子宮の外側(卵巣・腹膜・卵管など)に発生し、増殖する病気です。月経周期に伴ってこの組織が出血や炎症を起こし、強い生理痛や慢性的な下腹部痛、不妊の原因になることもあります。症状は人によって異なりますが、以下の特徴があります。
- 月経痛が年々強くなる
- 生理以外の時期にも下腹部や腰に痛みがある
- 性交時の痛み(性交痛)
- 排便時や排尿時の痛み
子宮内膜症は進行性の病気であり、放置すると症状が悪化したり、不妊症のリスクが高まったりすることがあります。最新の研究では、子宮内膜症は患者さんの理解が重要だとされています。早期発見と適切な治療が、将来の妊娠や生活の質を守るうえで重要です。
卵管炎・卵巣炎
卵管炎・卵巣炎は、細菌や性感染症(クラミジア、淋菌など)によって卵管や卵巣に炎症が起こる病気です。感染は子宮頸管から卵管や卵巣へ広がり、発症します。主な症状は以下のとおりです。
- 下腹部の強い痛み
- 発熱
- おりものの量やにおいの変化
- 性交時や排尿時の痛み
- 下腹部の強い痛み
炎症が進行すると骨盤内炎症性疾患(PID)と呼ばれる状態になり、不妊症や子宮外妊娠のリスクが高まります。急性期には抗菌薬による治療が行われますが、症状が強い場合や膿瘍が形成された場合には入院治療が必要なこともあります。
卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)
卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)とは、卵巣内にできる液体などを含んだ袋状の腫瘤です。多くの場合、良性であり、特に自覚症状がなく健康診断などで偶然発見されるケースも多いです。腫瘤が大きくなると、以下の症状が出ることがあります。
- 下腹部にしこりや膨張感を感じる
- 月経周期が乱れる
- 排尿の回数が増える(頻尿)
悪性の場合は卵巣がんと診断される可能性があり、早期発見が重要です。良性の卵巣嚢腫は、定期的な経過観察で様子を見る場合もあります。直径が5cmを超える場合や、悪性の疑いがある際には手術による摘出が検討されます。継続的に婦人科の定期検診を受け、異常の早期発見と早期対応が大切です。
卵巣捻転(らんそうねんてん)
卵巣捻転(らんそうねんてん)は、卵巣や卵管がねじれてしまうことで発生する疾患です。ねじれによって卵巣への血流が妨げられ、強い腹痛を引き起こすことがあります。場合によっては吐き気や嘔吐を伴うこともあり、放置すると卵巣の機能に悪影響を及ぼす恐れがあります。
多くの場合、卵巣捻転は突然に起こるため、迅速な診断と治療が重要です。激しい下腹部の痛みが現れた場合には、速やかに医師の診察を受けましょう。卵巣嚢腫を持つ方は卵巣捻転のリスクが高くなるため、注意が必要です。卵巣捻転は、激しい運動や妊娠、出産などが引き金となって発症することもあります。
少しでも異常を感じた際には、早めに医療機関へ相談することが大切です。
卵巣に痛みを感じたときの症状とセルフチェックのポイント
卵巣の痛みに関連する症状について、以下のとおり解説します。
- 痛みの種類
- 痛みの強さ
- 痛みに伴う随伴症状
- 危険な兆候
卵巣の痛みは、放置すると重大な疾患が潜んでいる可能性もあるため注意が必要です。ご自身の体調を正しく把握し、適切な行動をとるためには、痛みの性質や程度の理解が大切です。
痛みの種類
卵巣に感じる痛みは、原因や体の状態によってさまざまなタイプがあります。痛みの種類は以下のとおりです。
- 周期的に感じる、生理痛のような痛み
- 急に襲ってくる鋭い痛み
- 継続的に続く慢性的な痛み
周期的な痛みは、子宮内膜症などの疾患が関与している可能性があります。生理周期とは無関係に、チクチクした痛みや鋭い痛みが現れることもあります。左右どちらかの下腹部に限定されて痛むことが多く、生理痛のように下腹部全体に広がるケースは多くありません。
突発的な激しい痛みは、卵巣捻転や卵巣出血など、緊急対応が必要な疾患のサインの可能性があります。卵巣出血は、性交渉や外的な衝撃によって卵巣の血管が破れ、出血が起きる状態です。吐き気や冷や汗、意識の混濁などの症状がある場合は、すぐに医療機関を受診することが重要です。
鈍く持続する慢性的な痛みは、子宮内膜症や卵巣嚢腫が原因の場合もあります。子宮内膜症や卵巣嚢腫は、不妊症につながる可能性もあるため、早期の診断と適切な治療が求められます。
痛みの強さ
卵巣の痛みは、軽度の違和感から立っていられないほどの強い痛みまで幅広く、感じ方には個人差があります。軽い痛みでも2〜3日以上続くようであれば、念のため医師の診察を受けましょう。痛みによって動作や生活に支障を感じるような場合には、なるべく早く医療機関を受診してください。原因を明確にし、必要な治療を受けることが大切です。
立ち上がれない、意識がもうろうとするなど、激しい痛みがある場合は、卵巣捻転など緊急性の高い疾患の可能性があります。激しい痛みがある場合は、すぐに救急車を呼ぶか、速やかに医療機関で診察を受けてください。
痛みに伴う随伴症状
卵巣の痛みと同時に現れる症状(随伴症状)は、原因を見極めるための大切な手がかりです。痛みに伴う随伴症状は、以下のとおりです。
- 発熱:卵管炎や卵巣炎などの感染症が疑われる
- 吐き気:卵巣捻転や卵巣出血といった急性疾患の可能性がある
- おりものの変化:クラミジアなどの性感染症の可能性がある
- 不正出血:子宮内膜症や卵巣腫瘍、子宮体がん、子宮頸がんなどの疑いがある
危険な兆候
以下の症状が見られる場合は、できるだけ早く医師の診察を受けてください。
- 突然の激しい下腹部痛がある
- 痛みとあわせて吐き気や嘔吐を伴う
- 冷や汗が出る
- 突然の激しい下腹部痛がある
- 意識がもうろうとする、ふらつきがある
- 高い熱が出る
- 激しい腹痛に加え、不正出血が見られる
- 妊娠の可能性があり、強い下腹部痛がある
危険な症状は、卵巣捻転や子宮外妊娠、感染症など、迅速な対応が求められる疾患のサインの可能性があります。自己判断せず、早急に医療機関を受診してください。
卵巣の痛みへの対応と治療法
卵巣の痛みに対して取るべき対応や治療法について、以下のポイントを説明します。
- 市販薬の選び方
- 自宅でできるケア方法
- 検査内容
- 治療法
- 日常生活での予防対策
市販薬の選び方
市販薬の中には、卵巣の痛みを一時的に和らげる効果が期待できるものがあります。市販薬はあくまでも一時的な対症療法であり、痛みの根本的な原因を治すものではありません。長期間の使用は避け、症状が続く場合には必ず医師の診察を受けましょう。市販の鎮痛薬は、以下の種類があります。
- アセトアミノフェン:副作用が少なく、安全性が高い
- NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬):炎症を抑える作用があるため、炎症を伴う痛みに対して効果が期待できる
- 漢方薬:体のバランスを整えることで痛みの根本改善を目指す
自宅でできるケア方法
軽度の卵巣の痛みであれば、自宅でのセルフケアによって症状がやわらぐことがあります。下腹部を温めることで血行が促され、痛みが軽減されることがあります。温かいタオルや湯たんぽなどを用いて、リラックスした状態で下腹部を温めましょう。温度が高すぎると低温やけどの原因になるため、十分注意してください。
しっかりと休息を取ることも重要です。ストレスや疲れが蓄積すると、卵巣の痛みを悪化させてしまいます。自律神経やホルモンバランスにも悪影響を及ぼす可能性もあるため、無理をせず体を労わりましょう。
検査内容
卵巣の痛みの原因を調べる際には、以下の診察や検査が行われます。
- 内診:膣内に指を挿入して、子宮や卵巣の状態を直接触診し、異常の有無を確認する
- 超音波検査:子宮や卵巣の形状、大きさ、腫瘤の有無などを画像で確認する
- 血液検査:体内の炎症反応やホルモンのバランスを調べることで、感染症やホルモン異常がないかを確認する
治療法
痛みの原因に応じて、治療法が異なります。子宮内膜症が原因の場合は、ホルモン療法や鎮痛薬による薬物療法が中心です。ホルモン療法では、子宮内膜の増殖を抑えることで症状の緩和が期待できますが、吐き気や不正出血などの副作用が出る場合もあります。
卵巣嚢腫・卵巣捻転などが原因の場合、腫瘤のサイズや状態によっては、手術が必要な場合もあります。手術方法には、開腹手術と腹腔鏡手術があり、患者さんの体調や嚢腫の性質に応じて選択されます。
日常生活での予防対策
卵巣の不調を防ぐためには、日々の生活習慣を見直すことが重要です。栄養バランスの良い食事や適度な運動、質の良い睡眠を心がけ、ストレスをためないことが、健康維持につながります。婦人科での定期的な検診を受けることも予防の一つです。30歳を過ぎたら、年に1回を目安に婦人科検診を受けましょう。
検診では、内診や超音波検査を通じて卵巣や子宮の状態を確認できます。異常が早期に見つかれば、体への負担が少ない治療で済む可能性が高まります。
まとめ
卵巣の痛みには、排卵に伴う一過性の痛みから、卵巣嚢腫や子宮内膜症、卵管炎、卵巣捻転などの疾患によるものまで、さまざまな原因があります。痛みの種類や強さ、発熱・吐き気といった随伴症状にも注目し、自己判断せず早めに医師の診察を受けることが大切です。
突然の強い腹痛や意識がもうろうとするなどの異常が見られる場合は、緊急性が疑われるため、医療機関を受診してください。日頃からバランスの良い食生活、適度な運動、質のよい睡眠を心がけ、ストレスをためない意識が大切です。定期的に婦人科検診を受け、異常の早期発見と早期治療につなげましょう。
参考文献
Edgardo Rolla. Endometriosis: advances and controversies in classification, pathogenesis, diagnosis, and treatment. F1000Res, 2019, 8, F1000 Faculty Rev-529.
