hCG注射はいつ打つのが最適?効果・副作用・排卵タイミングを解説
不妊治療の現場でよく耳にするhCG注射は、排卵を促し、適切なタイミングで行うことで妊娠の可能性を高める一因と考えられています。hCGは「ヒト絨毛性ゴナドトロピン」と呼ばれるホルモンで、妊娠中に胎盤から分泌されるホルモンとほぼ同様の作用を持ちます。
このhCG注射は、タイミング法や人工授精、体外受精など、さまざまな不妊治療で用いられています。この記事では、hCG注射の適切なタイミングや効果、副作用、ほかの治療法との違いについて解説します。妊娠を目指す方の判断材料としてご活用ください。
橋本駅南口から徒歩1分の長谷川レディースクリニックは、生理不順やPMS(月経前症候群)など、女性ならではの体調の変化に関するご相談はもちろん、男性不妊に関する検査や治療にも対応しています。専門医がお悩みに寄り添いながら、適切なサポートを提供いたします。
また、当院は神奈川県相模原市、淵野辺駅から徒歩2分のソフィアレディスクリニックと連携し、婦人科・不妊治療を提供しています。2つの施設間で検査結果や治療方針を連携・共有することで、より円滑な治療体制を実現しています。少しでも不安やお悩みを感じている方は、お気軽にご相談ください。
hCG注射を打つベストタイミング
不妊治療でhCG注射の効果を十分に引き出すためには、適切なタイミングでの投与が欠かせません。ここでは、hCG注射を行うタイミングについて、重要なポイントや判断基準を以下の観点から解説します。
- hCG注射から排卵までの時間
- 排卵誘発におけるhCG注射のスケジュール
- hCG注射後の性交渉タイミングの目安
hCG注射から排卵までの時間
hCG注射後に排卵が起こるまでの時間は、一般的に24〜40時間とされ、平均ではおよそ36時間が目安です。これは、hCGが黄体形成ホルモン(LH)と似た作用を持ち、人工的に排卵を誘発する働きによるものです。
排卵までの時間には、卵胞の成熟度も大きく関わります。卵胞径が18〜20mm以上になると、hCG注射による排卵誘発の効果が高まるとされています。一方で、卵胞の成長が遅い場合は、追加の排卵誘発剤の使用や注射タイミングの調整といった対応が検討されます。
排卵誘発におけるhCG注射のスケジュール
hCG注射は、タイミング法や人工授精、体外受精など、さまざまな不妊治療で排卵誘発の目的に用いられます。それぞれの治療法によって、注射の役割や投与スケジュールは異なります。
タイミング法では、自然な性交渉のタイミングを調整するため、卵胞が十分に発育した時点でhCG注射を行います。これにより排卵時期を予測し、妊娠の可能性を高めます。
人工授精(IUI)では、精子を子宮内に直接注入するため、排卵時期に合わせた実施が必須です。hCG注射を投与し、通常は24〜36時間後を目安に人工授精を行います。
体外受精(IVF)では、採卵のタイミングが極めて重要です。成熟した卵子を得るため、採卵予定の約36時間前にhCG注射を行い、卵子の成熟促進と採卵時期の調整を行います。
投与量やスケジュールは、年齢、卵巣機能、これまでの治療歴などを踏まえて医師が個別に設定します。治療を受ける際は、不安や疑問があれば遠慮せず医師に相談しましょう。
hCG注射後の性交渉タイミングの目安
hCG注射後の性交渉のタイミングは、妊娠の可能性を高めるうえで重要です。一般的には、注射から約36時間後に排卵が起こるとされるため、注射当日と翌日に性交渉を持つことが推奨されます。
ただし、排卵のタイミングには個人差があるため、医師の指示に従うことが大切です。医師は、卵胞の大きさや成長具合、ホルモン値などを総合的に判断し、患者ごとに最適なタイミングを提案します。
hCG注射による効果
hCG注射による効果は以下のとおりです。
- 卵胞の成熟を助ける効果
- 排卵タイミングをコントロール
- hCG注射による黄体機能のサポート
卵胞の成熟を助ける効果
hCG注射には、卵胞の成熟を促す働きがあります。卵胞は卵子を包み込み、卵巣内で育てる重要な器官であり、成熟が不十分だと質の高い卵子が得られず、妊娠の可能性が低くなります。hCG注射は、この卵胞成熟をサポートする役割を担います。卵胞の大きさや成長状態はエコー検査で詳細に確認し、患者ごとに最適なタイミングで投与されます。
排卵タイミングをコントロール
hCG注射は、排卵の時期をコントロールする目的でも用いられます。排卵とは、成熟卵子が卵胞から飛び出し、卵管へ取り込まれる現象で、妊娠成立にはこのタイミングが重要です。一般的に、hCG注射から24〜40時間後、平均36時間程度で排卵が起こりますが、個人差もあります。そのため、医師による慎重な診察と適切な指導が不可欠です。
排卵時期を正確に把握することは、自然妊娠だけでなく人工授精や体外受精などの不妊治療においても大切です。hCG注射によって排卵のタイミングを調整することで、精子と卵子の出会う確率を高め、妊娠の可能性を向上できます。
hCG注射による黄体機能のサポート
hCG注射には、黄体機能を補助する役割があります。黄体は排卵後に卵胞が変化して形成され、妊娠初期を支えるために不可欠なホルモンであるプロゲステロンを分泌します。hCG注射は、この黄体の働きを支え、プロゲステロンの分泌を促進します。
特に、黄体機能不全の患者にとっては、妊娠を維持するために重要な治療手段の一つです。黄体機能不全は妊娠初期の流産原因の一つとされるため、適切な診断と治療が必要です。
hCG注射の副作用とリスク
hCG注射の副作用とリスクは以下のとおりです。
- hCG注射で見られる一般的な副作用
- hCG注射による卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスク
- hCG注射と多胎妊娠の可能性
hCG注射で見られる一般的な副作用
hCG注射後に比較的よく見られる副作用として、注射部位の痛み、腫れ、発赤があります。これは注射針による局所的な刺激が原因です。腫れや赤み、触れたときの痛みといった症状が現れますが、多くは数日以内に自然に治まります。ただし、症状が強い、または長引く場合は早めに医師へ相談しましょう。
hCG注射によって以下のような全身症状が現れることもあります。
- 頭痛やめまい
- 吐き気
- 倦怠感
上記はhCGホルモンの影響による一時的な症状であることが多く、市販の鎮痛薬で対処できる場合もあります。しかし、症状が改善しない、もしくは悪化する場合には、速やかに医師に相談することが重要です。
hCG注射による卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスク
hCG注射の副作用の一つに、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクがあります。OHSSは、hCG注射によって卵巣が過剰に刺激され、腫れや腹部への水分貯留が起こる症状です。特に以下の条件に該当する方は、発症リスクが高いとされています。
- 35歳以下の若年女性
- 痩せ型の体型
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)のある方
体外受精など排卵誘発を伴う治療では、複数の卵胞が育つことにより、OHSSのリスクがさらに高まる可能性があります。症状が重症化すると、呼吸困難、尿量の減少、急激な体重増加など深刻な状態に至ることもあります。
hCG注射後に腹部の張りや痛み、吐き気、息苦しさ、尿量の減少など、少しでも異変を感じた場合は、速やかに医師へ相談してください。
hCG注射と多胎妊娠の可能性
hCG注射は排卵を促す作用があるため、複数の卵胞が成熟して同時に排卵が起こることで、双子や三つ子といった多胎妊娠になる可能性があります。hCG注射単独よりもクロミフェンなど他の排卵誘発剤と併用した場合に、リスクは高まります。多胎妊娠では、以下のようなリスクが上昇します。
- 早産
- 低出生体重児
- 妊娠高血圧症候群
治療にあたっては、医師が慎重にスケジュールや薬剤量を調整し、リスク管理を行います。hCG注射を受ける際には、多胎妊娠の可能性についても事前に医師から説明を受け、メリットとデメリットを理解したうえで治療に臨むことが重要です。多胎妊娠は喜ばしい一方で、母体と胎児双方にリスクが伴うことを十分に認識しておきましょう。
hCG注射後の生活上の注意点
hCG注射後は、体内のホルモンバランスが大きく変化するため、日常生活でもいくつか注意が必要です。普段通りに過ごせる場合が多いものの、体調の変化に配慮しながら、少し意識して行動することが大切です。hCG注射後の生活上の注意点は以下のとおりです。
- 安静を心がける
- アルコールの摂取を控える
- 規則正しい生活習慣を送る
- 妊娠検査薬の使用は注射から約2週間後にする
安静を心がける
注射後は卵巣が腫れやすくなっており、負担がかかりやすい状態です。激しい運動や重い物の持ち運びは、痛みや出血のリスクを高めるため避けましょう。妊娠を目指すうえで大切な器官である卵巣を守るため、安静を意識して過ごすことが大切です。
アルコールの摂取を控える
アルコールはホルモンバランスに影響を及ぼし、hCG注射の効果を弱める可能性があります。また、妊娠の可能性がある場合は、胎児の発育への悪影響も懸念されます。注射後は飲酒を控えることが望ましいでしょう。
規則正しい生活習慣を送る
日々の生活では、栄養バランスの良い食事と十分な睡眠を確保し、心身の健康を維持することが重要です。ストレスはホルモンバランスを乱す要因となるため、リラックスできる時間を持ちましょう。鉄分や葉酸を多く含む食品を積極的に摂り、適度な運動やヨガで血流を促進することもおすすめです。
妊娠検査薬の使用は注射から約2週間後にする
hCG注射直後に妊娠検査薬を使用すると、注射の影響で偽陽性が出る可能性があります。正確な結果を得るためには、最後の注射から約2週間後に検査を行うようにしましょう。待つ間に体調の変化や不安があれば、遠慮なく担当医に相談してください。
他の治療法との比較・併用
不妊治療は、一人ひとりの状況に合わせた方法を選択することが大切です。hCG注射以外にも治療法があり、それぞれに特徴があります。自分に合った治療法を見つけるために、他の治療法と比較しながらhCG注射の特徴を理解して、どのhCG注射が有効なのか、他の治療法との併用についても理解しましょう。
他の排卵誘発剤との比較
hCG注射のほかにも、クロミフェン(内服薬)や点鼻薬などの排卵誘発剤があります。hCG注射は注射による投与が必要ですが、排卵日を正確にコントロールしやすいのが特徴です。卵胞が十分に育っているのに排卵が起こらない場合や、体外受精前に確実に排卵を促す必要がある場合に有効です。
クロミフェンは飲み薬で手軽に服用できますが、hCG注射に比べて排卵誘発効果は弱く、排卵が起こらないこともあります。副作用として子宮内膜が薄くなる可能性があり、受精卵の着床率が低下するリスクがあります。
点鼻薬は鼻から吸入するだけなので痛みがなく、使用の負担が少ない方法です。ただし、効果の現れ方には個人差があり、副作用として吐き気や頭痛が出る場合があります。
それぞれの排卵誘発剤にはメリットとデメリットがあるため、年齢、卵巣機能、過去の治療歴、治療への希望などを考慮しながら、医師と十分に相談して最適な方法を選びましょう。
人工授精や体外受精との併用
hCG注射は、人工授精や体外受精などの不妊治療と併用されることが多く、それぞれの治療で重要な役割を果たします。人工授精では、hCG注射によって排卵のタイミングをコントロールし、精子と卵子が出会う確率を高めます。体外受精では、hCG注射を投与して卵胞の成熟を促し、採卵のタイミングを調整します。
hCG注射は他の不妊治療と組み合わせることで、妊娠の可能性を高める効果が期待できます。最適な治療法は、年齢や卵巣機能、治療歴など患者ごとの状況によって異なるため、医師と相談して決定しましょう。
まとめ
hCG注射は、排卵を促進し妊娠の可能性を高める重要な治療法です。投与のタイミングは、排卵までの時間や治療スケジュールに合わせて調整され、効果を最大限に引き出すためには、医師の指示に従い適切なタイミングで性交渉を行うことが大切です。
この注射は、卵胞の成熟促進や排卵時期のコントロールに加え、黄体機能を補助する働きも持っています。一方で、注射部位の痛みや腫れ、吐き気などの副作用や、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)、多胎妊娠のリスクもあります。
hCG注射は人工授精や体外受精と組み合わせて使用されることも多く、妊娠率向上が期待できます。治療中に不安や疑問があれば、遠慮せず医師に相談し、納得のうえで安心して治療を進めましょう。
参考文献
Kol S. False positive blood hCG test following Corifollitropin alfa injection. Human Reproduction (Oxford, England), 2018, 33, 1, p.177.