妊活中にお酒は控えるべき?アルコールが妊娠に及ぼす影響と対策を医師が解説
「赤ちゃんが欲しいけど、お酒はどれくらいまでなら大丈夫?」と悩む方も多いです。アルコールの分解能力には個人差があり、少量でも胎児に悪影響を及ぼす可能性があります。FASD(胎児性アルコールスペクトラム障害)を防ぐためには、妊娠中や妊娠の可能性がある期間は、アルコールの摂取を控えることが推奨されます。
この記事では、妊活中のアルコール摂取が体に与える影響や、飲酒との上手な付き合い方について詳しく解説します。赤ちゃんの健康を守り、妊活をより良い形で進めるためにも、正しい知識を身につけ、お酒との向き合い方を見直しましょう。
橋本駅南口から徒歩1分の長谷川レディースクリニックでは、生理不順やPMS(月経前症候群)など、女性特有の症状に関するご相談に加え、男性不妊に関する検査・治療にも対応しています。経験豊富な専門医が、一人ひとりのお悩みに寄り添いながら、適切な医療サポートを提供いたします。
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【結論】妊活中の飲酒はできるだけ控えるべき
妊活中は、可能な限りアルコールの摂取を控えることが強く推奨されます。アルコールは女性の排卵機能やホルモンバランス、男性の精子の質に悪影響を及ぼす可能性があります。妊娠初期に飲酒すると胎児への影響が懸念されます。
「安全といえる飲酒量」は科学的に明確に定義されておらず、体質や代謝の個人差も大きいため、妊活中は控えましょう。男性においても、精子の運動率やDNAの健全性を保つためには、過度な飲酒を避けることが望ましいとされています。禁酒を完璧に行おうとしてストレスを感じてしまうと、妊活に悪影響を与える場合もあります。
大切なのは「赤ちゃんを迎える準備」として夫婦で協力し、無理のない範囲から生活習慣を見直していくことです。
妊活前に知っておきたい!お酒と妊娠の基礎知識
妊娠を目指す前に理解しておきたい、お酒と妊娠の基本的な情報について以下を解説します。
- アルコールが体内にもたらす影響
- 妊娠に適した体づくりとアルコールの関連性
- 男性の妊活における飲酒への注意点
アルコールが体内にもたらす影響
アルコールの摂取は、女性の排卵機能や男性の精子の質に悪影響を及ぼす可能性があります。飲酒により肝臓でアルコールが分解される際、有害な物質が生成され、ホルモンバランスを乱したり細胞を損傷したりするためです。女性には以下のような影響がみられます。
- 月経周期の不規則化
- 排卵機能の低下
- 妊娠までの期間が長引く傾向
男性への影響には、以下が挙げられます。
- 精子の運動能力の低下
- 精子の数が減少
- 精子の質が悪化
日常的に飲酒をしている女性は、お酒を全く飲まない女性に比べて妊娠に至るまでの期間が長くなるという研究結果も存在します。男性は飲酒量が増加するごとに精子の質が下がると報告されています。妊娠しやすい体を目指すには、飲酒量をコントロールすることが大切です。
妊娠に適した体づくりとアルコールの関連性
適度なアルコール摂取は妊娠率に大きな影響を及ぼさないとされていますが、過剰な飲酒は妊娠しにくい体質の原因になることがあります。アルコールが妊娠に必要な栄養素の吸収を阻害することによって、体内の栄養状態を悪化させるためです。アルコールの摂取は、体の栄養バランスやホルモンの働きにも影響を及ぼします。
栄養面では胎児の神経管閉鎖障害の予防に欠かせない葉酸の吸収を阻害することが知られており、妊娠を望む人にとって注意が必要です。ビタミンB群の体内での利用効率が低下したり、鉄分などのミネラルの吸収が妨げられたりすることもあります。
アルコールは睡眠の質を下げ、成長ホルモンの分泌量を減らすほか、卵子の質の向上に欠かせないホルモンバランスを乱すことがあります。妊娠しやすい体をつくるためには、栄養バランスの良い食事を心がけ、規則正しい生活習慣を維持することが大切です。
男性の妊活における飲酒への注意点
男性の飲酒は、精子の質に大きく影響を与えることが知られています。妊活を進めるにあたっては、夫婦そろって飲酒習慣の見直しが重要です。精子はおよそ74日間かけて形成されるため、今の生活習慣が2〜3か月後の精子の状態に反映されることを意識しましょう。
アルコールを過剰に摂取すると、精子のDNAに損傷が起きやすくなり、受精率の低下や流産リスクの上昇につながることもあります。長期的に大量の飲酒を続けると、精子をつくる力そのものが弱まるおそれがあるため、十分な注意が必要です。
男性も妊活の大切なパートナーとして、お酒との向き合い方を見直し、節度ある飲酒を心がけることが大切です。夫婦で協力して生活習慣を整えることで、前向きに妊活を進めましょう。
妊活中の飲酒によるリスク
妊活中の飲酒によって生じるリスクについて、代表的な4つのポイントを以下に解説します。
- 流産
- 早産
- 低出生体重
- 発達障害
- 胎児性アルコールスペクトラム障害(FASD)
流産
妊活中における飲酒は、流産のリスクを高める要因の一つです。アルコールは胎盤を通じて胎児に直接影響を与えるため、妊娠初期の重要な器官が形成される時期における飲酒は危険です。妊娠に気づく前の飲酒でも胎児に影響を与える可能性があるため、妊活を始めた段階で飲酒習慣の見直しを行いましょう。
妊娠初期には神経系や心臓などの生命維持に関わる器官が発達するため、初期は特に注意が必要です。禁酒が難しい場合は、医師に相談しながら徐々に飲酒量を減らすなどの対策を検討しましょう。
早産
妊娠中のアルコール摂取は、早産(妊娠37週未満の出産)のリスクを高めるとされています。アルコールは子宮の収縮を引き起こし、胎盤の機能低下を招くことから、妊娠の維持が困難になる場合があります。早産で誕生した赤ちゃんは、肺や臓器が未発達なことが多く、呼吸障害や感染症、脳出血などの重篤な合併症に直面するリスクが高まります。
新生児集中治療室(NICU)での長期入院が必要になることが多く、赤ちゃんだけでなく家族にも精神的・身体的な負担がかかる可能性があります。将来的には、学習障害や発達の遅れなどの課題に直面する可能性もあるため、妊活開始時からの禁酒が推奨されます。
低出生体重
妊娠期間中の飲酒は、胎児の正常な発育を妨げ、低出生体重児(2,500g未満)として生まれるリスクを高めるため注意が必要です。アルコールは胎児への栄養供給を阻害し、体重の増加を妨げる可能性があります。低体重で生まれた赤ちゃんは、免疫機能が未熟で感染症にかかりやすく、呼吸困難や体温調整がうまくできないなどの問題を抱えることがあります。
妊娠中期から後期にかけての飲酒は、胎児の体重増加に直接的な悪影響を及ぼすとされており、週に1〜2回程度の軽度な飲酒でもリスクがあることが指摘されています。妊活中から完全な禁酒を心がけることが、赤ちゃんの健やかな成長につながります。
発達障害
妊娠中のアルコール摂取は、胎児の脳の発育に深刻な影響を及ぼし、発達障害のリスクを高める可能性があるとされています。アルコールは脳細胞の形成を阻害し、神経系の正常な発達を妨げる場合があります。飲酒によって引き起こされる可能性のある発達障害には、以下が挙げられます。
- 知的機能の障害
- 学習能力の問題
- 注意欠如・多動性障害(ADHD)
- 自閉スペクトラム症(ASD)
障害は一生涯にわたり影響を及ぼすため、事前の予防が重要です。妊娠初期の8週間は、胎児の脳の基本構造が形成される重要な時期であり、この時期の飲酒は高いリスクを伴います。少量のアルコールでも脳の発達に影響を及ぼす可能性があるため、妊活を開始した段階から完全にアルコールを控えることが推奨されます。
胎児性アルコールスペクトラム障害(FASD)
胎児性アルコールスペクトラム障害(FASD)は、妊娠中の母親の飲酒によって胎児に生じる、さまざまな発達障害や身体的異常の総称です。FASDは妊娠中にアルコールを摂取しなければ防げる障害とされています。FASDの主な特徴は以下のとおりです。
- 低身長・低体重
- 顔貌の特徴(小さい目、鼻筋が通っていない)
- 学習障害
- 多動傾向
- 注意力の欠如
年齢を重ねることで一見目立たなくなることもありますが、完全に消えることはありません。FASDは、見た目だけでなく、認知・感情・対人関係など、目に見えにくい領域にも深刻な影響を与えることがあります。相手の気持ちを読み取ることや、自分の感情をうまく表現することが難しく、人間関係に悩みを抱えやすい傾向です。
些細なことに過敏に反応して強い怒りや悲しみを示すなど、感情のコントロールが困難なケースもあります。FASDのリスクを確実に回避するためには、妊娠中や妊娠の可能性がある時期は、アルコールの摂取を完全に控えることが望ましい対応です。
妊活中の飲酒に対する具体的な対処法
妊活中における飲酒への対策は、以下のとおりです。
- 飲酒量を減らす
- ノンアルコール飲料を楽しむ
- ストレス対策で飲酒に頼らない
飲酒量を減らす
妊活中でも、お酒を完全にやめるのが難しいと感じる方は、無理をせずに少しずつ飲酒量を減らす工夫を取り入れることが大切です。週に何回お酒を飲んでいるか、1回の飲酒でどのくらいの量を摂取しているかを記録しましょう。飲酒習慣を可視化することで、どの程度減らせば良いのかが明確になります。
ビール中瓶(500ml)を350mlに減らす、週に3回飲んでいる場合は2回に減らすなど、無理なくできる範囲で飲酒量を減らしていきましょう。
ノンアルコール飲料を楽しむ
ノンアルコールビールやノンアルコールワインなど、お酒に近い風味を楽しめる製品が数多く登場しています。ノンアルコール飲料を上手に活用すれば、飲酒の満足感を得ながらアルコール摂取量を減らせる可能性が高まります。ジュースや炭酸水、お茶などのノンアルコール飲料も、気分転換におすすめです。
ストレス対策で飲酒に頼らない
妊活中は、精神的なプレッシャーや不安がストレスとして蓄積しやすいため、意識的にリラックスする時間を持つことが重要です。ウォーキングやストレッチ、ヨガなどの軽い運動、好きな音楽を聴いたり、アロマを取り入れたりするのもおすすめのリフレッシュ方法です。
自分に合ったリラックス法を見つけて、ストレスを上手に発散しましょう。
パートナーと共に取り組む妊活のすすめ
パートナーと協力して妊活に取り組むための方法は、以下のとおりです。
- パートナーに妊活中の飲酒の影響を伝える
- 周囲の支えを活用する
- 専門家へ相談する
パートナーに妊活中の飲酒の影響を伝える
パートナーにお酒を控えてもらいたいときは、無理に禁酒を求めるのではなく「協力をお願いする」という姿勢で伝えることが大切です。「赤ちゃんが欲しい」という共通の目標を共有しながら、飲酒が妊娠に与える影響を説明しましょう。アルコールが妊娠に及ぼすリスクについても、正しく伝えることが重要です。
FASDのリスクや、男性側の飲酒による精子の質の低下など、根拠のある情報をもとに説明しましょう。伝える際には「お酒を減らすことで、精子の質が改善される可能性がある」などのように、ポジティブな言い回しを心がけましょう。
周囲の支えを活用する
妊活の期間は、まわりの理解やサポートが大きな心の支えです。信頼できる家族や友人に、必要に応じて気持ちや状況を打ち明けてみましょう。一人で悩みを抱え込まず、思いを共有することが大切です。もしも周囲に話しにくいと感じる場合は、専門の相談窓口を利用するのも一つの方法です。
不妊治療に特化したクリニックや、妊活を支援する団体など、相談できる場所は多く存在します。専門家の意見を聞くことで、不安や悩みを和らげられるかもしれません。
専門家へ相談する
妊活に関する正確な情報を得たい場合は、専門家に相談するのが確実な方法です。婦人科や産婦人科の医師に相談することで、自分たちの体の状態やライフスタイルに応じたアドバイスを受けられる可能性が高いです。パートナーと一緒に受診することで、お互いの理解が深まり、協力しながら妊活を進めるきっかけにもつながります。
妊活は人によってペースも悩みも異なります。周囲と比較せず、自分たちらしいスタイルで無理なく進めましょう。
妊活中の飲酒に関するよくある疑問
妊娠中のお酒に関してよくある疑問として、以下の4つを解説します。
- 妊活開始前の飲酒は赤ちゃんに影響する?
- 妊活中にノンアルコール飲料は大丈夫?
- パートナーだけ禁酒すれば十分?
- 妊活中にうっかり飲酒してしまったら?
妊活開始前の飲酒は赤ちゃんに影響する?
妊活を始める前の飲酒が、直接的に赤ちゃんへ影響を及ぼすケースは少ないとされています。アルコールが完全に体内から排出されるには一定の時間が必要なため、妊活を意識し始めた段階から、少しずつ飲酒量を減らすことが望ましいとされています。妊娠に気づく前の時期は注意が必要です。
妊娠は思い通りに進まないことも多く、予想よりも早く妊娠が成立する可能性があります。胎児の重要な器官は妊娠初期の2〜8週に形成されるため、この時期の飲酒はリスクを伴います。妊活を始めると決めた時点で、生活習慣全体の見直しをスタートさせるのが理想的です。
妊活中にノンアルコール飲料は大丈夫?
ノンアルコール飲料は、妊活中でも基本的に安全とされています。日本の基準では、アルコール度数1%未満の飲料がノンアルコールとして扱われています。商品によっては完全にアルコール0%のものもあれば、0.5%程度の微量のアルコールを含むものもあります。安心したい場合は、表示を確認して、完全にアルコールフリーの商品を選びましょう。
ノンアルコール飲料には糖分が多く含まれているものもあるため、体重管理の観点から飲みすぎには注意が必要です。お酒の代替として上手に活用し、妊活中のストレス軽減に役立てましょう。
パートナーだけ禁酒すれば十分?
女性だけでなく男性側の飲酒習慣を見直すことが重要です。男性の過度な飲酒は精子の質を低下させ、妊娠の成立を阻害したり、流産のリスクを高めたりする要因になることがあります。どちらか一方だけが禁酒や減酒を続けていると、不公平感やストレスにつながる可能性があります。
夫婦で一緒に生活習慣を整えることで、精神的なサポートもしやすくなり、より前向きで充実した妊活を送ることにつながります。
妊活中にうっかり飲酒してしまったら?
妊活期間中に誤ってお酒を飲んでしまっても、過剰に不安になる必要はありません。1回の飲酒が必ずしも妊娠に悪影響を及ぼすわけではなく、過度なストレスや自己嫌悪の方が妊活に悪影響を与える可能性があります。
飲んでしまった場合は、水分をしっかりと取り、体内のアルコールを早めに排出するよう意識しましょう。栄養バランスの良い食事や適度な運動を心がけ、生活リズムを整えることが大切です。完璧を目指しすぎず「今日からまた気をつけよう」という前向きな気持ちで妊活を続けていくことが重要です。
まとめ
妊活中のアルコール摂取は、少量でも胎児に何らかの影響を与える可能性があるため、できる限り控えることが推奨されます。飲酒による影響は個人差が大きいため、不安がある場合は医療機関に相談しましょう。妊娠初期の飲酒は、胎児の成長に深刻な影響を及ぼす可能性があり、FASDを引き起こすリスクも高まります。
妊娠の可能性がある段階や妊娠中は、アルコールの摂取を避けることが重要です。パートナーと協力し合いながら、飲酒のリスクについて正しく理解し、妊娠しやすい体づくりを一緒に目指しましょう。
参考文献
- Brendan Le Daré, Vincent Lagente, Thomas Gicquel.Ethanol and its metabolites: update on toxicity, benefits, and focus on immunomodulatory effects.Drug Metab Rev,2019,51,4,p.545-561
- Elena Ricci, Suha Al Beitawi, Sonia Cipriani, Massimo Candiani, Francesca Chiaffarino, Paola Viganò, Stefania Noli, Fabio Parazzini.Semen quality and alcohol intake: a systematic review and meta-analysis.Reprod Biomed Online,2017,34,1,p.38-47
