精液検査の基準値をわかりやすく解説!正常値と異常値の見極め方
「精液検査」の言葉に、不安や抵抗を感じる方も多いです。実際には不妊の原因の約半数が男性側にあるとされており、検査を通じて自身の状態を知ることは大切です。世界保健機関(WHO)が14カ国・4,500人以上の男性データを分析した結果、妊娠に影響を与える精子の基準値が示されました。基準値を上回っていても、必ずしも妊娠が可能というわけではありません。
この記事では、精液検査で何が分かるのか、どこで受けられるのか、費用はどの程度かかるのかを解説します。不妊治療に携わってきた医師の視点から、検査を受ける際の流れについても紹介します。今後の家族計画を前向きに進めるためにも、本記事を通じて精液検査に対する理解を深めましょう。
橋本駅南口から徒歩1分の長谷川レディースクリニックでは、生理不順やPMS(月経前症候群)など、女性特有の症状に関するご相談に加え、男性不妊に関する検査・治療にも対応しています。経験豊富な専門医が、一人ひとりのお悩みに寄り添いながら、適切な医療サポートを提供いたします。
また当院では、神奈川県相模原市・淵野辺駅から徒歩2分のソフィアレディスクリニックと連携し、婦人科および不妊治療においてスムーズな連携体制を構築しています。検査結果や治療方針の共有により、患者さまにとって安心かつ効率的な診療環境をご提供いたします。
精液検査の基準値
精液検査の基準値に関して、以下の項目を解説します。
- 精液検査における正常値の意味
- WHOが示す精液検査の基準値
- 精液検査の各項目が示す意味
精液検査における正常値の意味
精液検査における正常値とは、世界保健機関(WHO)が定めた国際的な標準数値であり、自然妊娠に至った男性のデータをもとに設定されています。検査基準値が「妊娠しやすい理想の数値」ではなく、「妊娠の確率が統計的に低下すると考えられる下限値」であるということです。
数値が基準を超えていても必ず妊娠に結びつくとは限りませんが、下回っている場合は妊娠の可能性が低くなる傾向です。妊娠の成否は精液の状態だけで決定されず、パートナーの健康状態や年齢、生活環境など、さまざまな要因が影響します。検査結果に一喜一憂せず、総合的に捉えることが大切です。
WHOが示す精液検査の基準値
WHOの「精液検査マニュアル 第6版」では、主要な基準値は以下のとおりです。
- 精液量:1.4ml以上
- 精子濃度:1,600万/ml以上
- 総精子数:3,900万以上
- 運動率(動いている精子の割合):42%以上
- 前進運動率(直線的に動く精子の割合):30%以上
- 正常形態率(形態が正常な精子の割合):4%以上
精子濃度が基準ギリギリの1,600万/mlであっても、運動率が60%と高ければ、自然妊娠の可能性は高いとされます。研究によると、自然妊娠を経験した男性の精液所見が「正常」とされる水準よりも優れている場合が多いことが示されています。基準を満たすことを目標にするのではなく、より良好な数値を目指す姿勢が妊娠への近道となります。
精液検査の各項目が示す意味
精液検査では、男性の生殖機能を評価するために複数の項目が測定されます。検査項目が示す意味は以下のとおりです。
- 精液量:1回の射精によって排出される精液の総量
- 精子濃度:1mlあたりに含まれる精子の数を示す指標
- 総精子数:射精された精液全体に含まれる精子の総数
- 運動率:観察された精子のうち、動いている精子の割合
- 前進運動率:まっすぐ卵子に向かって泳ぐ精子の割合
- 正常形態率:形に異常のない、正常な形状を持つ精子の割合
各項目を総合的に判断することで、男性の生殖能力の正確な把握につながります。
精液検査結果の見方と基準値の理解
精液検査を正しく理解し、対処するために以下の方法を解説します。
- 検査結果を正しく読み解くための方法
- 異常値が出たときの正しい受け止め方
- 精液検査の結果に対する不安と専門的な相談先
検査結果を正しく読み解くための方法
精液検査の結果は、WHOが定めた基準値と照らし合わせながら、全体のバランスを見て総合的に評価します。一つの項目が基準値をわずかに下回っていても、他の項目が良好であれば、自然妊娠の可能性は十分にあります。精子濃度がやや低めであっても、運動率や正常形態率が高ければ妊娠の確率は保たれるとされています。
すべての項目が基準値をクリアしたとしても、妊娠の成功を保証されるとは限りません。免疫学的な要因やパートナー側の卵子の質、女性の年齢や健康状態なども妊娠に大きく関わります。精液の状態は体調やストレス、季節などによって変動するため、一度の検査結果だけで結論を出すのは避けましょう。
正確な判断を行うためには、複数回の検査を行い、結果を総合的に判断することが重要です。
異常値が出たときの正しい受け止め方
検査結果で一部の項目が基準値を下回った場合「異常値」と判断されますが、即座に妊娠が不可能という意味ではありません。生活習慣の見直しや適切な治療を行うことで、精子の状態の改善が期待できます。
軽度の異常であれば、禁煙やアルコールの制限、栄養バランスの良い食事など生活習慣の改善により、精液の質が向上する場合が多いです。中等度から重度の異常を認めた場合は、薬物治療やサプリメント、専門的な治療などが必要な場合もありますが、現代医療では選択肢が豊富にあります。
人工授精や体外受精などの生殖補助医療を活用することで、精液の質に課題があっても妊娠・出産に至る事例は数多くあります。結果に一喜一憂せず、医師としっかり話し合いながら、自分たちにとって適切な治療方針を選択しましょう。
精液検査の結果に対する不安と専門的な相談先
精液検査の結果に不安を感じるのはごく自然です。どのような結果であっても、一人で抱え込まず、医師への相談をおすすめします。不妊治療を専門とするクリニックでは、カウンセラーによるメンタルサポートを受けられることもあります。パートナーとともに相談を受けることで、互いの理解を深め、今後の選択肢について一緒に考えることが大切です。
インターネット上の情報だけで判断せず、専門の医師に相談しましょう。
精液検査を正しく理解するための5つの重要ポイント
精液検査について理解を深めるための5つのポイントは、以下のとおりです。
- 精液検査の基本的な仕組み
- 男性不妊の原因を見極めるうえでの精液検査の重要性
- 精液検査は泌尿器科や専門クリニックで受診可能
- 精液検査の費用は保険が適用される場合が多い
- 精液検査の受診手順
精液検査の基本的な仕組み
精液検査とは、採取した精液を顕微鏡などで詳細に調べ、男性の生殖機能を評価する検査です。精液検査は、精子の数や運動率、形状などを分析し、男性不妊の原因を特定するための重要な情報を得る手段です。外見上は健康に見える男性であっても、精液検査によって精子の数が少ない、運動性が低い、形態に異常があるといった問題が判明することがあります。
男性不妊の原因を見極めるうえでの精液検査の重要性
精液検査では、精液量・精子濃度・総精子数・運動率・前進運動率・正常形態率など、男性の生殖能力に関する複数の項目を確認できます。精子濃度が基準値を下回る「乏精子症」や、運動率が低い「精子無力症」、精液中に精子が確認できない「無精子症」など、さまざまな異常の有無を判断できます。
正常な形の精子の割合が少ない「奇形精子症」や、射精量が少ない「精液減少症」などの状態も診断可能とされます。検査から得られる情報は、不妊の原因が男性側にあるかを見極めるための重要な判断材料です。薬物治療が必要か、人工授精や体外受精などの生殖補助医療を検討すべきかなどの今後の治療方針の決定につながります。
一度の検査だけで完全な判断はできないため、必要に応じて複数回の検査を行うことが推奨されます。
精液検査は泌尿器科や専門クリニックで受診可能
精液検査は、泌尿器科や不妊治療に特化したクリニックで受診が可能です。かかりつけの医師がいる場合は、相談してみましょう。医療機関の選び方がわからない場合は、インターネットで近隣の施設を検索したり、地域の保健センターに相談したりするのもおすすめです。早期に妊娠を希望している方は、不妊治療を専門とするクリニックを受診しましょう。
精液検査の費用は保険が適用される場合が多い
精液検査にかかる費用は医療機関によって異なりますが、一般的には5,000〜10,000円程度が目安です。健康保険の適用を受けることができ、自己負担が3割の方であれば、1,500〜3,000円ほどです。検査項目の内容によっては保険適用外となる場合もあるため、事前に医療機関へ確認すると安心です。
医療費は、検査費用だけでなく、将来的に不妊治療が必要となる可能性も見据えて検討しましょう。
精液検査の受診手順
検査前には、禁欲期間(通常2~7日間)を守る必要があります。禁欲期間が短すぎると精子数が少なくなり、長すぎると運動率が低下する可能性があるため、適切な期間を守りましょう。採精方法には、以下の2つの方法があります。
- 医療機関の専用個室で採取する方法
- 自宅で採取し、医療機関へ持参する方法
自宅で採取する場合は、精子の劣化を防ぐために温度管理や時間に注意し、指定された手順に従うことが重要です。採取後はなるべく早く提出しましょう。保温バッグや専用容器を用意している医療機関もあります。
検査結果は通常1~2週間後に説明されます。医師から生活習慣の改善や治療方針に関するアドバイスが受けられます。結果をもとに、医師と一緒に今後の治療方針を決めていきましょう。
精液検査の基準値についてよくある疑問
精液検査に関するよくある質問として、以下の内容を解説します。
- 精液検査の基準値は年齢によって変わるのか?
- 基準値をすべて満たしていれば妊娠できるのか?
- 検査項目のどれかが基準値未満だと不妊と診断されるの?
- 世界中で精液検査の基準値は同じなの?
- 基準値と妊娠のしやすさはどれくらい関係しているの?
精液検査の基準値は年齢によって変わるのか?
精液検査の基準値は、年齢に関わらず共通の数値が用いられますが、精液の質には加齢に伴う変化があるとされています。年齢による変化の一般的な傾向は、以下のとおりです。
- 20〜30代前半:精液の質が最も良好な時期
- 40歳以降:精子の濃度や運動率が徐々に低下し始める時期
- 50歳以降:明確な変化が現れることもある時期
個人差が大きく、60代でも良好な検査結果を示す方もいます。年齢による変化は自然な減少であり、基準値を下回っていたとしても妊娠が不可能とは限りません。医師は年齢や背景を考慮したうえで、必要に応じて治療法を検討します。
基準値をすべて満たしていれば妊娠できるのか?
精液検査のすべての項目が基準値を満たしていても、妊娠が保証されるわけではありません。WHOが示す基準値は「妊娠の可能性が低くなる下限値」であり、妊娠しやすい理想的な数値ではない点に注意が必要です。妊娠は男性側だけでなく、女性側の状態にも大きく左右されます。
妊娠は、卵子の質や排卵のタイミング、卵管の通過性、子宮内膜の状態など複数の要因が影響します。基準値をクリアしていても妊娠に至らない場合には、以下の原因が考えられます。
- 免疫的要因(抗精子抗体など)
- 精子のDNA損傷
- 性交渉のタイミングのズレ
妊娠を希望する場合は、精液の基準値だけでなく、パートナー双方の総合的な検査や、適切なタイミングでのアプローチが重要です。
検査項目のどれかが基準値未満だと不妊と診断されるの?
すべての項目が基準値を満たしていないと不妊と判断されるわけではありません。精液検査では、複数の指標を総合的に評価するため、一部の数値が下回っていても、他の項目が良好であれば自然妊娠の可能性は十分にあります。精子濃度がやや低くても、運動率や正常形態率が高ければ、妊娠が成立するケースも多いです。
軽度の異常であれば、生活習慣の改善によって改善する例も多く、一回の結果に一喜一憂せず、医師と相談しながら総合的に判断することが大切です。
世界中で精液検査の基準値は同じなの?
現在、多くの国や医療機関で採用されている基準値は、WHOが策定したガイドラインにもとづきます。2021年の第6版の基準値は、国際的な標準として広く使用されていますが、一部の医療機関では独自の判断基準を併用している場合もあります。地域の特性や検査方法の違いなどを考慮したものであり、WHOの基準と大きく逸脱することはありません。
日本国内でも、日本生殖医学会をはじめとする各学会がWHOの基準を取り入れており、全国的に一定の評価基準が用いられています。検査を受ける前に、どの基準値をもとに評価されるのかを医療機関に確認すると安心です。
基準値と妊娠のしやすさはどれくらい関係しているの?
精液検査の基準値と妊娠率には一定の関連がありますが、数値が高ければ確実に妊娠につながるという単純な関係ではありません。WHOの基準値は、自然妊娠した男性のデータをもとに設定されたもので、妊娠の可能性を判断するうえで一つの目安です。妊娠率に影響する要因は、以下のとおりです。
- 男性の要因:精液の質、年齢、生活習慣
- 女性の要因:卵子の質、年齢、排卵状態
- 共通:タイミング、ストレス
基準値を超えていても妊娠が保証されるわけではなく、一部が基準を下回っていても妊娠する可能性は十分にあるとされます。
まとめ
精液検査は、精子の数や運動率、形態などを詳しく調べることで、男性不妊の原因を明らかにするための重要な検査です。WHOが定める基準値は「妊娠の可能性が低くなるリスクを示す下限値」であり、下回る場合には妊娠の確率が下がる可能性があります。検査結果が基準値に満たなかったとしても、妊娠を完全に妨げるわけではありません。
生活習慣の見直しや薬物治療、生殖補助医療などによって、改善が見込まれる場合もあります。バランスの良い食事や適度な運動、十分な睡眠、禁煙など、日常生活を整えることが、精子の質の向上につながります。正しい知識と専門的なサポートを得ながら、前向きに取り組みましょう。
参考文献
- WHO:第6版(2021年)
- Sorena Keihani, Lauren E Verrilli, Chong Zhang, Angela P Presson, Heidi A Hanson, Alexander W Pastuszak, Erica B Johnstone, James M Hotaling.Semen parameter thresholds and time-to-conception in subfertile couples: how high is high enough?.Hum Reprod,2021,36,8,p.2121-2133
